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第17回_ヒトの一生を考える~これからの医療と保険~

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こんにちは。十返舎テックです。

前回、前々回で「ヒトの一生」をテーマに、経済と技術の発展・発達により“寿命”が延伸し、“病気”に対するアプローチが時代とともに変化していったことをお伝えしました。今回は“これからの医療と保険”について考えていきたいと思います。

これからの医療

これからの医療は“4つのP”がキーワードになると言われています。

Predictive(予測的)

まず1つ目は“予測的な医療”です。
将来における様々な疾病に罹患するリスクを予測します。

予測ができるということは、例えば「糖尿病に罹患する人は毎日ラーメンを1杯食べている」とか、「すい臓がんに罹患する患者の約半数はご両親のどちらかが何かしらのがん罹患歴がある」とか、これまでの経験を研究・分析し“予測モデル”を構築することができたということに他なりません。

精度の高い予測モデルを構築するためには大量の分析対象となるデータが必要となり、多くの方の協力と膨大な時間・費用をかけて世界各地で研究活動が行われております。代表的な研究活動として“コホート研究”というものがあります。

コホート研究(コホートけんきゅう、英語cohort study)とは分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。要因対照研究factor-control study)とも呼ばれる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

コホート研究 - Wikipedia

日本でも多くのコホート研究が行われ、今日から将来の医療を支える大変重要な活動です。

予測する上で重要な要素がもう一つ。それが「遺伝子(ゲノム)解析」です。

1990年にアメリカが30億円の費用と15年の歳月を費やし、ヒトのゲノムの全塩基配列を解析する“ヒトゲノム計画”をスタートしました。2003年4月に解析結果が公開されプロジェクトは完了します。2003年は奇しくもDNAの二重らせん構造が発見された1953年からちょうど50周年に当たる年で、解析するために使用するコンピュータのハードウェアスペック向上により、当初計画より2年早くプロジェクトを終えることができました。膨大なコストを費やしたプロジェクトでしたが、その後、安価に遺伝子解析を実現すべく、“1,000ドルゲノム解析プロジェクト”が始動。2019年現在、ゲノム解析に必要な費用は目標に掲げた水準に近いものになってます。

これらの活動によって、私たちの将来は様々な疾病の予測ができると期待されています。

Preventive(予防的)

さまざまな疾病が予測可能となった社会では何が起きるでしょうか。答えは言わずもがなですが、「じゃぁ、疾病に罹患しないように予防しましょう。」ということになります。疾患の発症を抑制するための疾患予防とそれに関するサービスが、今後さまざまな企業や医療機関から提供されることでしょう。

近年“健康増進型保険”という新しい保険のカタチが生まれ、生保各社は健康的な生活を『支援』する商品やサービスを提供し始めました。損害保険会社でも健康増進を実現する取り組みを始めております。

健康増進型保険には大きく2つに大別できます。

まずは健康状態の維持や生活習慣を改善するための“行動”を支援する保険です。その代表格は住友生命が南アフリカのDiscovery社とソフトバンク社、3社協業でサービスを提供している「Vitality」でしょう。

http://sp.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2018/180717.pdf

健康診断や各種がん検診結果をポータルサイトにアップロードしたり、ウェアラブルデバイスを装着して運動し、その記録をアップロードすることでポイントを獲得し、獲得したポイントで様々な特典(リワード)を得られるというものです。住友生命が提供する「Vitality」は、それ単体では加入できない“特約”扱いとなっており、また、月額864円(税込)の利用料を支払う必要があります。海外で人気を博したこの仕組みですが、その裏には日本のように医療制度が社会保障として整備されていないとった事情もあるようです。日本においてどれだけ受け入れられるのかはまだまだ不明確ですが、これからの保険の在り方に一石を投じた商品と言えるでしょう。

もう一つの健康増進型保険は、会社や市区町村で受診する定期健康診断の結果を提出すると保険料が割引なるというものです。代表格として第一生命が提供する「健診割」が挙げられます。

ミュージシャンのDaigoさんがイメージキャラクターを務め、Dai語で『K・S・W(健診割)』と宣伝しております。この商品は保険加入時に健康診断結果を提出する“だけ”で定期保険など死亡保障系商品の保険料が割引になり、健康診断結果が優良な場合はさらに割引を実施するという2段階割引の仕組みが設けられております。“定期的に健康診断を受ける人は、程度の差はあれ、日ごろから生活習慣を気にしている人が多い = 健康的だ” ということをビッグデータ解析で結論付けてこの商品を開発したと言われております。一方でこの商品を発売した2018年4月は「標準死亡表改定」により、各社死亡保障系商品の値下げを実施しているため、マーケティング戦略としてこのような形の割引を実現したともいわれており、その真偽は定かではありません。

今後しばらく生命保険市場は、“健康増進”をテーマにした様々な商品・サービスが登場することと考えられます。

Preemptive(先制的)

ゲノム診断やバイオマーカーを用いて、将来発症するリスクが高い疾患に対し、その発症前に診断・予測を行い介入しようとする医療を先制医療と呼びます。医療技術の発達によりそれら行為が可能となり、ハリウッド女優のアンジェリーナジョリーさんが乳房を摘出したというニュースが話題になりました。

これまでの予防医学との決定的な違いは、予防医学は集団を想定したものでしたが先制医療は個々人に特化したものと言えます。ゲノムの解析技術向上が先制医療の発展を後押ししていると言えますが、まだまだ研究施設や環境が充実しているとはいえません。また、ゲノムは究極の個人情報であり、それは両親や子供にも受け継がれるものであるため、倫理的な問題点も多く存在し、我々はまだゲノムの正しい取り扱い方を見いだせていません。先制医療に対する保険制度も十分とは言えず、今の制度のままだと医療の公平性を保つことは難しく、社会課題に発展する可能性があり、今後の医療界の動向に目を離せません。

Personalized(個別化)

これまで「予測」「予防」「先制」というキーワードをお伝えしましたが、それらは広義な意味で個別化医療と表現することができます。が、ここでいう個別化医療は究極的に発展した医療、すなわちゲノム情報に基づく個々人に最適な薬物治療を指します。その人の生活習慣や体質、家系的遺伝や人種・性別などありとあらゆる情報を突き詰めてその人にフィットした治療薬を選別することで、効き目の薄い投薬を避け効果的な薬物治療がそう遠くない将来実現すると考えられております。

個別化医療推進を目的として2004年に設立された団体『Personalized Medicine Coalition』の報告書(2011年)によれば、薬物治療の個別化医療が実現すればアメリカ国内における乳がんの化学療法を34%減少させ、大腸がんにおける医療費約6億ドル以上を節約できるとまとめてます。

“個別化”に関しては将来における生命保険の在り方を論ずる際に必ず話題になります。個別化医療に対応した商品(現在の先進医療保障の進化版)の提供はもちろんですが、これまで加入者全員一律だった保障内容をウェアラブルデバイスから得られる情報等を駆使してリスクの細分化を実現し、個々の生活状況に応じた保障を提供する『個別化保障』の提供によって、今まで以上にお客さまに寄り添った商品・サービスを提供しようという発想を業界誰しもが持っております。

社会の多様化に伴い医療や保険のみならず、世の中のありとあらゆる商品・サービスは今後、個別化がキーワードになっていくと考えられます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。ヒトの一生については戦後、高度経済成長を経て急速に変化していきました。この変化は、今後ますます顕著になっていきます。我々が忘れてはならないのは、今、世界を見渡しても医療の行き届かない方々が大勢いるということです。医療の高度化は我々に明るい未来をもたらしてくれるものであるとは思いますが、それが限られたごく一部の人間のモノになってしまうことは避けなければなりません。相互扶助の精神を持った生命保険だからこそ、それら社会と向き合い実現できる未来というものがあると私は信じてますし、その一端を担っている(と、勝手に考えているだけですが・・・)自分の仕事に誇りを持っています。

これからは生命保険というモノ・サービスを提供するだけにとどまらず、事業活動を通じて社会に貢献することが求められてきます。答えはありませんが、私たち一人ひとりのそうした考えがより良い未来を実現すると確信してます。

それでは、本日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました。