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第16回_ヒトの一生を考える~病気~

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こんにちは。十返舎テックです。

本日のテーマは「病気」です。病気は“ヒトの死”と密接に関わり合う重要なテーマです。時代時代で死因は大きく異なり、その時代がどのような生活環境だったのかを見て取ることができます。

病気のプロセス

一般的に“病気”と表現するものは、目に見てわかる状態、つまり発症している状態を指しますが、そこに至るまでと発症以降のプロセスをここで簡単に説明します。

  1. 病因(原因)
  2. 病理
  3. 未病
  4. 発症(罹患)
  5. 介入(治療)
  6. 結果(軽快・治癒・死亡)

ざっと表現すると上記6工程を1から順番に進んでいきます。我々が“病気である”と認識するのは4以降です。また、我々生命保険ビジネスの対象とする領域も同様で、これまでは、発症・介入・結果のいずれかの事象に対して保険金・給付金のお支払いを実施してきました。

さて、このプロセスをもう少し具体的に説明したいと思います。

1854年 ロンドンで大流行したコレラとその対策

コレラは感染すると激しい嘔吐と下痢による脱水症状を引き起こし死を招く恐ろしい感染症です。1883年にロベルト・コッホが病原体として発見し、世間にコレラ菌が認知されました。

ロベルト・コッホの発見より30年ほど前に、ロンドンのブロードストリート周辺で原因不明の病に侵される人が大量に発生しました。当時はウィルスという概念がなく、「悪い空気が充満しているのではないか?」といった、なにか神がかったものが原因と考えられていましたが、実はコレラの感染だったことが後々判明します。

ジョン・スノーという医師が原因不明の病に侵されている患者の住まいを調査すると、興味深い事実が浮かび上がってきます。それは、発症者は特定の地域に密集していることと、その中心に一つの水道ポンプが存在するということです。下の地図が当時の調査結果を表現したものですが、赤がコレラ発症で死亡したものが住んでいた家、青い丸で囲ったところが水道ポンプの位置です。

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https://ameblo.jp/pipe51/entry-12349975129.html より引用

ジョン・スノー医師はこの調査結果から、何か目に見えない病因が水を媒介して広がったと考え、その水道ポンプを止栓したところ、コレラの流行を治めることができました。病気のプロセスで考えると以下のとおりです。

  1. 病因:不明。当時はコレラ菌はまだ認知されていなかった。
  2. 病理:病因を確定させることはできていなかった。
  3. 未病:コレラ発症は突然起こり、その予兆はつかめていなかった。
  4. 発症:原因不明の疫病発症。大量の死亡者がでた。
  5. 介入:調査より水道ポンプを一つ止栓。
  6. 結果:死亡者減少。

病因がわからずとも、死亡者が特定の地域に密集していることを突き止め、水が何かしら関係しているとする仮説を立て、有効な介入が実施できることを示した意義は大きいと言えるでしょう。病気は科学です。病気の発症には必ずメカニズムが存在します。

高血圧の歴史

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%AB%E3%82%BF%E4%BC%9A%E8%AB%87 より引用

第二次世界大戦の戦後処理を話し合ったヤルタ会談の写真です。左から英国 チャーチル首相、米国 ルーズベルト大統領、ソ連 スターリン書記長です。長かった戦争の終結とその後の未来について語り合ったものと思いますが、中央のルーズベルト大統領はヤルタ会談の1年後に亡くなります。原因は高血圧による脳出血で死亡日当日の血圧は300/190mmHgだったと言います。なぜ、ルーズベルト大統領はこんな状態まで高血圧を放っておいたのでしょうか?

それは、高血圧が様々な重篤な疾患を発生させる病因であることが、まだ世間に認知されていなかったからです。

高血圧は自覚症状がほとんどありません。脳卒中や心疾患と因果関係があると考えている人はほとんどいませんでした。1,000ページにも及ぶ当時の医学書においても、高血圧について記載されている分量はほんのわずかだったそうです。また、血圧を下げる降圧剤と呼ばれる薬の開発が盛んになったのは1950年を過ぎたころからです。ルーズベルト大統領がどんなに重篤な状態だったか、誰もわかっていなかったのかも知れません。

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https://medicalnote.jp/contents/170111-003-CTより引用

さて、そんな高血圧が重要な疾患であると認知されたプロセスは以下のように表現できます。

  1. 発症:脳卒中・心疾患
  2. 病因:高血圧(研究により判明)
  3. 介入:降圧剤による発症前介入
  4. 結果:脳卒中・心疾患罹患率低下→死亡率低下

現在は生活習慣病を引き起こす重要な指標として、街のドラックストアなどでも気軽に高血圧を計測することができますし、ご家庭用の計測器をお持ちの方も多くいらっしゃいます。

その時代時代で病気の捉え方は異なり、それがその時代の死因割合に大きく影響していきます。研究と技術の進歩が私たちの生活の質を向上させてくれるのは間違いありませんが、一方で、疾病プロセスの未病状態が顕在化し、過剰な医療を招く可能性もゼロではありません。

未病の顕在化

重大事故のその裏に・・・

  • 1979年 スリーマイル島原子力発電所事故
  • 1986年 チェルノブイリ原子力発電所事故
  • 1986年 スペースシャトル チャレンジャー号爆発事故

これらの事故に共通するものは何でしょう。それは、事故原因が作業員の睡眠不足によるヒューマンエラーと考えられている(または確定している)ことです。

いわゆる睡眠時無呼吸症候群や睡眠障害と呼ばれるものです。日本においては2003年にJR山陽新幹線ひかり126号の運転士が、広島~岡山駅間を走行中に居眠りをしたとニュースに取り上げられ、睡眠障害が広く認知されました。その後も、様々な交通機関で睡眠障害に関する事故やインシデントが発生したことで、国土交通省は運輸事業者あてに睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査を推奨してます。そのような動きもあり、睡眠時無呼吸症候群の治療に使用するCPAP装置のレンタル市場は年々拡大し、2018年度時点で世界のCPAP市場規模は44億USドル以上と言われており、今後もこの市場は拡大すると見込まれております。

甲状腺がんスクリーニング検査の広がりと波紋(韓国)

韓国では2000年ごろから急激に甲状腺がんのスクリーニング検査が広がり、“過剰診断”が問題視されました。

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韓国の甲状腺がん手術件数(https://togetter.com/li/910992 より引用)

甲状腺の一部にできる悪性の腫瘍を甲状腺がんと呼び、その9割が乳頭がんと呼ばれるるがんで、極めてゆっくり進行し生命にかかわることはごく稀と言われております。そのような性質であるため、特にリスクが低いと判断された場合は手術による積極的な治療を行わず、定期的な超音波検査で経過を観察していくケースも少なくありません。

その甲状腺がんのスクリーニング検査が広く一般に普及したことで、韓国では甲状腺がんの手術数が2001年から10年で10倍に増加。2014年3月には過剰診断を問題視した韓国医師連合が甲状腺がんのスクリーニング中止を訴えるなど、社会問題になりました。

がんのスクリーニング検査との付き合い方には難しいものがあります。

がんのスクリーニング検査は検査日時点の状態を観察する定点検査です。
進行が極めて速く自覚症状が少ない特性を持つがんの場合は、1年前のスクリーニングで問題なくても、その1年後のスクリーニングでは時すでに遅しの状態でがんが発見されることもあります。
甲状腺がんのように進行が極めてゆっくりながんは早期発見がしやすいですが、生命へのリスクが低い場合、その検査に意義があるかは疑問です。本来であれば20年後に見つかるはずだったがんを早期に見つけ、本来であれば20年後に摘出すればよい腫瘍を今摘出することが果たして良いことなのか。我々一般人は知識がないばかりに、知らないうちに情報に踊らされているかもしれません。

 

ストレス社会?精神疾患患者の増加

過剰診断についてもう一つ。
近年、うつ病に代表されるような心の病、精神疾患を有する外来患者数が増加しております。

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https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000108755_12.pdf より引用

平成11年と平成26年のデータを比較すると、気分障害と認知症(アルツハイマー病)が圧倒的に増加していることがわかります。認知症(アルツハイマー病)は高齢化が要因と考えられなくもないですが、それ以外にも診断法が進化したことにより医師から認知症(アルツハイマー病)であると診断されるケースが増えたと考えられるでしょう。

気分障害についても診断法の確立が患者数を押し上げている要因と考えられます。患者数増加に伴い、精神科医が在籍する病院や診療所も年々増加しております。

また、昨今では自ら進んで精神科へ受診しに行き、何かしらの診断をもらうというケースも多くなっているようです。中には「自分が部屋をかたずけられないのは病気に違いない」ということで精神科に行き、医師から精神の異常はないと告げられたところ「そんなはずはない!!だったらなんでかたずけることができないんだっ!?」と医師に詰め寄る人もいるそうです。

“心の病=免罪符”と捉えている人も少なくなく、生命の危険が低いためにそのような人たちに適当な病名を授ける医師もおります(適当と表現しましたが、あくまで法令を遵守していることが前提で自らの責任の範囲内で・・・という意味です)。

また、精神疾患患者の増加要因として製薬会社によるマーケティングも考えられます。

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うつ病啓発キャンペーンの新聞広告(https://www.ntt-ad.co.jp/research_publication/publication/megurohatsu/sr_04.html より引用)

ご覧いただいているのは2004年に広告コンクールで金賞を受賞したものですが、最近の製薬会社は“病気に対する薬を売る ではなく 薬に対して病気を作り出す”と考えているのではと勘ぐってしまいます。現に、うつ患者の大半が使用しているSSRI(抗うつ剤)は、2000年から8年間で売り上げが10倍になったと言われております。

  • 薬を開発する製薬会社
  • 診療科を拡大する病院
  • 免罪符を手にしたい患者

ストレス社会という敵対すべきものは、本当に存在するのでしょうか?

なお、近年のうつ病の広がりについては、日本精神神経科学会による2017年シンポジウムでも取り上げられ、『現代の精神科薬物療法に潜む問題点』が議論されました。

ちなみに…

増加している精神科を有した診療所が運営しているサイトです。ポップで気分が明るくなるようなデザインと、抗うつ剤の効果をマンガで面白可笑しく表現してます。

精神疾患患者が増加している背景を理解したうえで見ると・・・。なんだか怖く感じてきませんか?

最後に

いかがでしたでしょうか。病気の捉え方というのは時代と背景で大きく変わります。病気に対する保障を提供している我々は、このような変化を迅速にビジネスに取り込み、社会的意義のあるサービスや商品を提供しなければなりません。

次回は「これからの医療と保険」をテーマに語りたいと思います。

それではまた。最後まで読んでいただきありがとうございました。