さぁ、生命保険会社の内勤について語ろう

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第13回_デジタル・ディスラプターの脅威

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こんにちは。十返舎テックです。

突然ですが、今の日本に生命保険会社が何社あるかご存知ですか?金融庁が認可している会社は、なんと42社です!(うち、1社は外国生命保険会社として登録)

https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/hoken.pdf

人口減少による市場の縮小が各産業で起こっている日本において、これだけの数の生命保険会社が必要かというと疑問です。そもそも、生命保険って確率論の世界ですので、保険に加入している人が多ければ多いほど健全な運営と事業継続が出来ます。
2014年に第一生命が大手として初めて株式会社へ転換を果たした際は、業界再編が進むのではという見方をする方もおりましたが、10年20年30年と長期契約が前提となる生命保険を保有している会社同士のM&Aはなかなか難しく、損害保険業界のようにメガ生保が誕生することはありませんでした。

では、今後はどうでしょうか?本日のテーマは、生命保険業界を襲う『脅威』です。

デジタル・ディスラプターの登場

デジタル・ディスラプターという言葉を聞いたことあるでしょうか?
テクノロジーを活用して強力なプラットフォームを構築した一部のIT企業がさまざまな産業に進出し、既存企業が淘汰される事態が起きております。その様子はまさに“破壊者(ディスラプター)”です。
生命保険業界においても、これら企業の存在は『脅威』であり、我々は手をこまねいている場合ではなく、本気で未来を考え始めなければいけません。

企業の栄枯盛衰

YouTubeに面白い動画が公開されておりますので紹介します。

この動画は、2001年~2018年における、世界のトップを走るグローバルカンパニーの『ブランド価値』を独自に数値化し、それら価値が約20年間でどのように変化していったかを表現してます。
2000年初頭に世界に名を馳せていたトップ企業がどのようにその地位を奪われていったか、まずはご覧ください。 


トップブランドの価値推移

2007年に初代iPhoneを発売したAppleは、その後世界のトップを走り続けています。

IT企業の雄、IBMはハードウェア事業からクラウドサービス事業への転換を上手に果たせず新興企業に追い抜かされます。MicrosoftもIBM同様の衰退を一時期危惧されましたが、何とか持ち直すことが出来ました。

インターネット小売業でスタートしたAmazon.comは、小売りからクラウドサービス事業へと柱を移し、その戦略は見事成功を収めました。そのほかインターネットの活用で、Google、Facebookなども途中からトップ企業として名を連ねております。

製造業を柱とする企業は、そのほとんどがランキングに名を残せませんでした。現在、ランキング上位に名を連ねているのは、インターネット企業と呼ばれるテクノロジーをうまく活用している企業たちです。我々が今まで気づいていなかった『新しい価値』をもたらしていることが共通点として挙げられます。

インターネット企業が変えたもの

インターネットは我々の生活を変えました。
我々はiPhoneを使って、Googleの検索エンジンから様々な情報を取得し、Facebookで世界とつながり、生活必需品をAmazonから取り寄せます。
インターネットとテクノロジーの発展によって、手のひらサイズのデバイス1つで何でも実現できる便利さを手に入れることができました。
手のひらサイズのデバイスを通じて、私たち個人の様々な情報がサービス提供企業に流れます。それら情報を活用して、私たち自身が気づいていないニーズを分析し、その結果、個々人にあった商品・サービスのおススメ情報がレコメンドされ、それをきっかけに商品・サービスの購入を促す。これが今まさに起こっている情報革命です。

インターネット企業は、我々の一挙手一投足を記録した膨大なデータから導き出される最適解を分析し、それをビジネスに活用します。これにより、主には『小売業』と『広告業』のビジネスモデルが大きく変化していきました。

 

テクノロジーの発展で生命保険のビジネスモデルは変わったか?

ライフネット生命の軌跡

ネット専業の生命保険会社が2006年に誕生しました。ご存知、ライフネット生命です。
営業職員という伝統的な販売チャネルを持たず、インターネット経由の直販一本に絞ることで安価な保険商品の提供を実現してきました。
新しいビジネスモデルで挑戦し続けるライフネット生命は、誕生から十数年の間でどうなったでしょうか?

まずは、直近の決算資料で新規契約の獲得件数推移が掲載されてますので、ご覧ください。

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ライフネット生命 2018年度第三四半期決算資料抜粋

https://ir.lifenet-seimei.co.jp/ja/library/presentations/main/07/teaserItems1/01/linkList/0/link/RD_3Qfy2018_ja.pdf

2008年の営業開始から順調に右肩上がりで新規契約を獲得してきましたが、2013年度下期より成長が鈍化します。
当時の決算報告では、支出を圧縮するために当該期間中の広告宣伝費を抑えた結果として、新契約の獲得件数が鈍化したと説明しております。営業開始5年を経て、インターネットを活用した生命保険加入意向ある顧客層の獲得は一巡したと言えるでしょう。

2014年度ごろはライフネット生命が様々な転換を迫られた時期です。
同社の認知度が世間に広がりつつある中で、ITリテラシーが高くない層からのコンタクトも増えたことを背景に、保険プランナーによる電話無料保険相談サービスを開始し始めました。また、スマートフォンの利用者が急速に増加した時期でもあり、同社はフューチャーフォンからの加入サービスを停止し、スマートフォンの手続き強化に経営資源を集中させ始めました。

2015年度にはインターネットチャネル以外の販路拡大を図っており、『スルガ銀行』や『ほけんの窓口』といった代理店チャネルの活用や、KDDIとの資本業務提携契約を締結し、これまでリーチできていなかった顧客層へのアプローチ強化に乗り出しました。

現在、ライフネット生命は“ネット直販と代理店”2つのチャネルを組み合わせた戦略を採用してます。残念ながら、ネット直販一本での事業維持・拡大を図っていくことは困難であることを証明したのではないでしょうか。

また、営業職員チャネルに対する社会的評価が見直された出来事が2011年にありました。多くの犠牲が出た『東日本大震災』です。
生命保険会社各社の営業職員の方々は、自身が被災者であるにも関わらず、お客さまのご自宅や避難先を1件1件訪問し、安否確認や必要なお手続きのご案内を実施しました。営業職員の方々の自発的な行動と、業界全体が“自分たちにできることは何か”ということを真摯に考えた結果でしたが、いつも批判ばかりされている生命保険や営業スタイルへの評価が一変し、単なる商品販売にとどまることなく、“お客さまと人生を共にする大切なパートナー”として、その存在を再定義する出来事だったと思います。

人だからこそできることが確かに存在し、インターネットやテクノロジーが生命保険にもたらしたビジネスモデル変革のインパクトというのは、今のところ、そこまで大きなものではありません。

ネット専業を謳ったライフネット生命の現在

ライフネット生命は一時期抑制していたテレビCM等を、近年、積極的に放映しており、営業職員がいないことで人件費が抑えられている代わりに広告宣伝費が必要不可欠なコストになっております。

営業費用を抑えることで安価な保険を実現するとしていた同社ではありますが、歴代の決算資料を確認すると、新契約1件あたりに必要な営業費用は2014年度ごろは4万円台で推移していたところ、直近2018年度はおよそ6万円となっており、当初の理想を実現できているかというと疑問が残ります。

しかし、これまで生命保険各社が公表してこなかった営業費用の内訳を公表し続けていることは、大変意義のあることだと私個人は考えておりますし、顧客に正直であり続けようとする同社をこれからも応援していきたいです。

営業職員チャネルが主軸のビジネスモデルは維持できるのか?

ネット専業の保険会社が、当初の思惑通りに市場開拓できなかったことを考えると、やはり、今後も生命保険会社の主力チャネルは営業職員なのでしょうか?

残念ながら、それも違います。

少子高齢化を背景に確実に日本の労働人口が縮小していくなかで、各社の営業職員陣容を現在の規模で維持することは困難です。これまでのビジネスモデルは、近い将来限界を迎えるでしょう。

それだけではありません。世界に名をはせるインターネット企業、例えばAmazonが日本市場向けに保険商品を売り出す、または、取り扱いを開始したら、ライフネット生命とはまた違った結果を得ることが出来ると考えています。

  • 会員の性別、年齢、職業、趣味・趣向、これまでの購買履歴やクレジットカードの利用状況を保持している
  • その人の経済状況や属性を分析し、最適な保険設計をレコメンドして提案する
  • 保険加入手続きや請求手続きは、ポータルサイト上でわずか数クリックで完結できる

こんなことを実現されてしまったら、日本の生命保険業界は太刀打ちできず、市場を奪われることになるのではないでしょうか。
これは夢物語ではなく、近い将来、実現する可能性が高いシナリオであり、そのような存在を生命保険会社各社も脅威と捉えて、テクノロジーを活用した新しいサービスの検討に着手している会社も存在します。また、これまでのように“内製化を前提としたものではなく、様々な企業と連携して新しい商品やサービスを生み出していこうという動き”は、いままで考えられなかったことです。

最後に

テクノロジーは日進月歩です。地球の裏側の名も知れない企業が、ある日突然、画期的サービスを誕生させるかもしれません。

元号が令和となり、新しい時代を迎えました。これからの生命保険業界は、間違いなく激動の時代を迎えます。
私個人としては、その激動に身を投じて、生命保険業界の中から社会にインパクトある新しいことを実現していきたいと考えてます。

生命保険会社のこれからを考える新しい発想を、我々生命保険会社は求めています。
是非、就職先の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

それでは、本日はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました。